菫

マンチェスター・バイ・ザ・シーの菫のレビュー・感想・評価

4.5

喪失によって得られる出会い、鬱々とした日々に灯る小さな光、苦しい時だからこそ強く感じる人の優しさ。主人公の壮絶な経験をもって、人生の複雑さを生々しく描いた傑作だった。

深く傷ついた心は二度と癒えず、一度閉ざされてしまった心は二度と開かないものなのかと、悲しみと絶望で涙が止まらなかった。だけど、心に傷を負った人々を肯定し寄り添うという、この映画のさりげない優しさにどこか救われている自分もいた。「無理に頑張る必要はない、今は無理でもいつか出来ればいい」自分にも人にも、こういう寛容さと思いやりを与えながら生きたい。

最後に、微かに見える希望。
リーはきっとこの先大丈夫だという根拠のない自信が湧き出てきた。何年後か何十年後か、彼はいつか穏やかな心持ちでマンチェスターバイザシーに戻って来られると思う。ランディと腹を割って話し合える日だって来ると思う。私はそう信じたい。
菫