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あしたのパスタはアルデンテのakrutmのレビュー・感想・評価

3.9
パスタ会社を経営する一家を舞台に、ローマで大学に通っている次男の帰郷をきっかけに起こる騒動をユーモラスに描いた、フェルザン・オズペテク監督のコメディ・ドラマ映画。イタリア映画界の最高賞であるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では、祖母役のイラリア・オッキーニと父親役のエンニオ・ファンタスティキーニが助演女優賞と助演男優賞を受賞している。

中心となるテーマはLGBT。この帰郷中に次男トンマーゾがゲイであることと作家を目指すことをカミングアウトしようとするが、その前に長男アントニオがゲイであることをカミングアウトしてしまう。そこで見せる両親の反応は、いわゆる昔ながらの保守的な人々がみせる拒否的な反応。今ではこういう描き方は単純過ぎるかもしれないが、LGBT法案の行く末なんかを見ると、日本の保守政治家なんてこんな程度。しかも、本作と違って、聞く耳を持たないから始末に負えない。

でも、こんなテーマながらも、イタリア映画特有のカラッとした陽気さが映画全体を包んでいるので、重々しくならずに見ることができる。アメリカやフランスだと、こういう感じにはならないだろう。また、長男のせいで次男がカミングアウトできず、父親と恋人の板挟みになるなど、自分中心で全てを考えないという描き方も良い。そのほかにも、祖母や共同経営者の娘アルバの恋愛などのかなわない恋愛や、兄弟の人生における自由などLGBT以外のいろいろなテーマもあって、ドラマ映画としても充実した内容の秀作だと言える。個人的には、アルバを演じたニコール・グリマウドの強気な女でありながらの童顔が印象に残る。

それにしても、邦題は意味不明。この映画のどこを見れば、この邦題が思い浮かぶのだろうか?原題は、何を仕出かすかわからない危険人物を意味していて、映画の重要人物を指していることがわかる。
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