ゆみな

あしたのパスタはアルデンテのゆみなのレビュー・感想・評価

3.6
フェルザン・オズペテク監督との出会いは「向かいの窓」だった。それを観た後に残る余韻に魅せられて、彼の映画をもっともっと観たくなったんだよなぁ…で、これが二本目。

実家のパスタ工場を継ぐことになった兄アントニオの社長就任を祝う晩餐会に出席することになった弟トンマーゾは、その席で自分は家業を継ぐ気はなく小説家を目指していること、そして自分はゲイであることをカミングアウトしようとするんだよね。でも、そのことを事前に兄に相談していたにも関わらず、なぜか兄が自分自身がゲイだとカミングアウトしてしまう…それにショックを受けて父が倒れてしまったりしてトンマーゾは言うに言えない状態に。
でもさ、わかるんだよアントニオの気持ち。だって、彼はずっとずっと我慢して自分の恋すら犠牲にしてきたのに、それを知ってか知らずかトンマーゾは自分だけ更に自由に羽ばたこうとしている…やるせない。
トンマーゾに想いをよせるアルバの恋心も切なかったなぁ…ゲイのトンマーゾには女である自分が恋の対象にならないことを知っている。同じように叶わない恋をしていたトンマーゾの祖母の言葉が沁みるのよ…「叶わない恋は終わらない…永遠に続くもの」
トンマーゾの恋人マルコとゲイ友達御一行が出てくるあたりは物凄いコメディ色が強くなる!ひたすら家族にゲイだと悟られないようにするゲイ友達御一行にウケる!海水浴のダンスシーンとか最高!監督自身がゲイだからなのかわかんないけど、ゲイ御一行の言葉や仕草がいちいちリアル!
トンマーゾとマルコの絆も垣間見えるシーンだったなぁ…それを見つめるアルバの視線のせつなさったらないよ。

で、ラスト近辺の祖母の爆弾投下。時にはすべてを打ち壊すことも必要だと…。なんかさ、家族をまとめるのは愛よりも死だ…って言うあの映画の言葉を思い出してしまったよ。祖母の言葉のひとつひとつがとても意味のあるもので心にジワジワと伝わってきたよねぇ…きっとこれからは上手くいくって確信させるようなラストのダンスシーン。素敵な映画でした。
ゆみな

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