このレビューはネタバレを含みます
ネイティブ・アメリカンの居留地で殺人事件……という時点でハッピーな要素とは無縁の映画だと覚悟していたけど、それでも見終わった時予想以上に心にずっしりときて疲弊した。ジェレミー・レナーとエリザベス・オルセンのスター感とか、凄腕スナイパーっぷりとかがなんとかエンタメ要素になって、底までは沈みきらなかったという感じ。
刑務所が天国に思えるような辺境の土地で送る生活は想像を絶する。しかも、自ら望んでここに来た人なんてほとんどいない訳だしね。どこまでも広がる雪の白とそこに点々とついた血の赤が、白人とネイティブアメリカンを象徴する色で、そんな意味合いも含んでいるのかな。
話の本筋である事件の真相は胸糞すぎて辛かった。こいつも裸足で走らせろよ、と思ってたらしっかり脱がせてくれて、フィクションの中だけでも因果応報があったのが救いか。それでも奪われたものは戻ってこないけど。
鑑賞後に保留地やMMIWについて調べるとさらに色んな知見を得られた。先住民族の女性が性犯罪の被害者になる確率は他の女性より高いが、まともな捜査がなされる可能性は低い。事態の全容を掴もうにも、映画の最後で示されたように統計データは存在しない。人種、ジェンダー、植民地政策、アメリカという国の成り立ちまで、色んなものに思いを巡らせることになる映画だった。