Torichock

ウインド・リバーのTorichockのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.5
「Wind River/ウィンド・リバー」

僕は何と戦っているんだろう?

時々、得体の知れない自分の中に存在するスイッチが作動してしまいそうになる。
怒りを抱いてる人間に対してもそうだし、なんなら、優しさを与えてくれる人に対しても、もう全てに対してNOを突き付けてしまいたくなる。
多分、ぼくの性格が悪いんだろうけど、それでもどうにか踏ん張って家に着き、眠ってしまえば大抵は忘れてしまう。だけど、全部が全部洗い流されるわけじゃない。

そういえば、シャドーボクシングしてる時に思うんだけど、これはきっと運動やウォーミングアップとはまた違った意味を感じる時がある。
永遠に、自分と同じを動きをする相手。
そして、こいつに打ち勝たない限り、決して他者になんか勝てるわけもない。
いや、あるいは、鏡の前の自分に勝つために、他人を想定して、拳を突き出すのではないか?とも考える。

バカみたいだけど、本当に、敵は己の中にあるんだなと。

精神論・綺麗事、そんな言葉がたくさんあるが、意外にそういうものは真っ当な考えなのかなとも感じる。

"自分の感情に勝つことにする"

というセリフがあった。
これは、多分様々な映画で観てきたカッコいい人間の生き様をらこの一本の作品の中で堂々とセリフにし、さらにそれを凝縮した形でアクションに見せてくれたのが、本作で一番の収穫だった。

諦めそうになることばっかだよ、生きていると。
人それぞれ、生き方は十人十色だけど、ぼくがカッコ悪いと思う人間は、

"自分の感情と戦うことを諦めた人間"

だと思ってる。
感情的な怒りに身を任せることも、感情的な文句を意見だと勘違いしてることも、衝動的な感情を愚直(素直とは違う、愚かでバカバカしいから)に行動にしてしまうことも、全ては諦めた人間だと。

あれ?「アイ、トーニャ」支持してたのに、それは矛盾じゃね?って思う方もいるでしょう。
でも、時代や社会や境遇や政治や他人や親や友達やメディアや、自分以外の何かのせいにしても、決して腐らなかったと思うし、それでも食らいついてやる!生きている!と、高らかに命を輝かせようとしていた。
諦めていなかった。

この映画に出てくるヤツラはどうだろう?
"諦めた"人たちにしか見えないんだ。
オープニング、走り、生き絶える彼女の、足元にも及ばない。

自分の人生で、そういう時はどうできるだろうか?
この映画を観て、誰がよその国の他人事の話だと思えよう。
僕らは、いつあちらに転がってもおかしくないし、いつ諦めた人と思われてもおかしくないのだから。
勧善懲悪的な楽しみとはまた別の、何か自分の中にある魂の映画だと思うよ、僕は。

オルセンのプリケツも拝めるし、自分の魂を奮い立たせることが出来る。
目には目を、罪人は同じ罰を!とか、そういう感情的な見方を越えて欲しいと思うし、
この作品がもっと多くの人に、真心溢れる形で伝わることを願ってやまない。

この作品で何も感じれない人とは、話もしたくないレベル。

僕は戦う、自分の感情と。
死ぬまでの戦績で、1勝でも勝ち越したら、自分の人生は間違ってなかったと誇れることを信じて。
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