mimitakoyaki

奇跡の教室 受け継ぐ者たちへのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

4.3
ずっと楽しみにしてた作品、教育ものは大好物なので、自分もゲゲン先生の素晴らしい授業に参加したような満足感があります。

パリ郊外の高校。
多種多様な人種、民族、宗教などが入り混じったフランスの縮図のような教室。
入学したばかりの生徒は、好き勝手して問題ばかり起きるし、この光景は「パリ20区、僕たちのクラス」とそっくりですが、高校生にもなったんやしもうちょっと落ち着かんかい!と言いたくなるくらい、常に騒がしいし、すぐにケンカするし、フランス人の自己主張の激しさに驚かされます。

他の先生にもウンザリされる落ちこぼれクラスなんですが、ゲゲン先生が、ナチスの強制収容所をテーマとした歴史コンクールに出ようと提案したところから、荒れたクラスの生徒たちが、紆余曲折を経ながら、学ぶ喜びを知ったり、協働する事でクラスの一体感が生まれてきたりして、どんどん成長していくんです。

ナチスの大虐殺は差別的思想から起きたことなので、その歴史を見つめる事は、ただ歴史の知識を深めるということでなく、人種のるつぼであるパリに生きる自分たちの日々の生活や学校の中でも抱えている問題と繋がっていて、ナチスのホロコーストをまさに自分の事として考えられるようになっていったところが本当に素晴らしかったです。

特に、強制収容所の生還者のおじいさんの証言を聞くシーンは、あたしにとっても貴重な体験になったし、日本の学校のように合唱コンクールや文化祭や体育祭を通じてクラスの連帯感を作っていくのもいいですが、こういう大きなテーマをもとに、生徒たちが自分たちで資料を集めて調べ上げ、考えを発表するっていうグループワークがとても素晴らしくて、こんな教育実践すごい!と思いました。

日本なら、すぐに政治色出すなとか偏るなとか言われて、先生たちもビビってできないでしょうね。
日本でも、原爆や大空襲、沖縄戦などの戦争の被害やアジアでの加害についても学んだり、差別についてとか、ほんとにやったらいいのにって思います。

過去の歴史から学び、異なる民族、人種、宗教、セクシャリティなど、互いを知り認め合うことが、戦争を回避し平和な世界を作っていくことにつながっていくから、教育の中でも大切にして欲しいとあらためて感じました。

歴史に向き合うことを通して、先生と生徒たちの信頼関係も強まり、生徒たちにとってこの教室が自分を輝かせる居場所になっていったのも感動的でした。
地味ですが本当に良い作品で、見応えがありました。
たくさんの人に見て欲しいです。

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