emily

奇跡の教室 受け継ぐ者たちへのemilyのレビュー・感想・評価

4.1
貧困層が暮らすパリ郊外のレオン・ブルム高校。いわゆる落ちこぼれクラスにはいろんな人種が混じり合っている。厳格な歴史教師アンヌ・ゲゲンは生徒たちに全国歴史コンクールへの参加を提案する。「アウシュビッツ」という難解なテーマになかなか食いついてくれないが、強制収容所の生存者を授業に招き、経験した事を語ってもらう。涙ながらその話を聞き、生徒たちが変化していく。

実話を元に映画化されており、その言葉にはリアリティと重みがある。落ちこぼれの生徒たちと、舞台となる他民族国家のフランスの現状をしっかり描写している。人種差別は現状でも続いており、それを見て見ぬ振りして暮らす日常が冒頭からしっかり描く。

彼らの心を動かすのは、受身の授業ではない。一人の教師の提案は彼らに学ぶとこの楽しさを味あわせるのだ。強要ではない。自然に彼らのモチベーションを刺激し、知りたい欲求を植え付けていく。答えを与えるわけではない。そこにたどり着いた喜びを味あわせるのだ。先生がするのはそこへ導く小さな道標を与えること。それは生徒たち一人一人のポテンシャルを信じているからできることだ。

先生の熱意はしっかり見守ることに抑えられている。だからこそ自由な発想で現実を知り、受け入れ考える生徒たちが居る。そこに静かに寄り添い、少しずつ成長し、学ぶ喜びを感じていく生徒たちと先生の距離感が非常に良い。肉親よりも愛と信頼を感じる。だからこそしっかり真実と向き合い知ることでまた次の世代に伝えていくのだ。

人種差別に苦しんだ歴史があり、それが今に繋がる。当たり前に笑いあえる日々も、苦しんだ人達が居たからありえる現実なのだ。そうして今自分たちができることに繋がっていく。学んだことが自然と今の行動に繋がっていき、それがまた受け継がれていく。

そうしてどんな現実でも諦めなければ、光は見えるし道は開ける。ほんの些細なことでも、それは生きる希望へと変化していくのだ。
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