Jeffrey

ダムネーション 天罰のJeffreyのレビュー・感想・評価

ダムネーション 天罰(1988年製作の映画)
4.5
本作はクラスナホルカイ・ラースローが初めて脚本を手がけ、ラースロー、ミハーイが揃い、タルベーラスタイルを確立させた記念碑的作品。このたびブルーレイボックスが発売され購入したやつ鑑賞した。ラースローと出会ったタルベーラはサタンタンゴをすぐに取り掛かろうとしたが、時間も予算もかかるため、先に本作に着手したそうだ。不倫、騙し、裏切り。荒廃した鉱山の街で罪に絡み取られて破滅していく人々の姿を、サタンタンゴを手がけた名手ガーボルが映画史上最も素晴らしいモノクロームショットで捉えている。

今回の3枚組のボックスの中でこの作品以外は俺が求める監督のいびつさや不気味さがなくて退屈だったが、この作品は冒頭のゴンドラの長回しシーンから非常に引き込まれる。劇中のタイタニックバーの土砂降りの中小動物が横切るショットからスライド長回しに変わる場面とかものすごく厭世的な気分になるほど演出が素晴らしくさすがはタルベーラ。クライマックスの雨降る炭鉱街の泥水の中を犬と戯れるシーンの長回しとかマジでかっこいいし、これまた同じ日雨降る中を壁から徐々に右にずっとスライドしていき、大勢の人民をとらえる流れるような、まさに実相寺昭雄の無常、曼荼羅、哥を想い出させるようなカメラアングルとショットはたまらなくしびれる。これは傑作。

やはりラースローが脚本家として入ってくると凄まじい作品が出来上がると感じる。サタンタンゴよりシンプルな映画を作ろうと思い立ち、脚本家と共同で本作の脚本を執筆したそうだが、監督によれば低予算それも超がつくほどの予算で制作されたこの作品は、国の検閲の支配を受けない形で完成されたらしい。個人的に低予算でこれほどまでのクオリティーが作れるのかと驚愕してしまったのだが、彼ならやってのけるだろう。この作品までの彼の作品群たちの平均的なショット持続時間は短いが、この作品はそれの何倍もある。

そこからサタンタンゴのようなカット数を極端に減らし撮り続ける彼の代名詞的な演出がその中に多く含まれている。この作品はベルリン国際映画祭はトロント国際映画祭に出品され大いに喝采を受けたそうだが、ハンガリー政府の政治家たちが映画を嫌って、母国で上映することができないといい、ベルリンに亡命した後にベルリンの壁が崩壊して東西冷戦が終結してようやく念願のサタンタンゴの映画化に取り組むために母国へと帰還したと言う話も忘れがたい。
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