こんなにも叙情的で悲しく虚しい作品だったんですね。原作は児童文学で読んだきり。市川崑監督がセルフリメイクしたほど思い入れのある作品、詩的な映像ともの悲しい唱歌で胸の奥を掴まれました。戦争の痛ましさや残酷さより、すべてに力尽きた虚しさと人間らしさを切に求める兵士たちの姿が描かれていました。
元音楽家の隊長中心に合唱を心の支えにしている隊員たち、主人公の水島一等兵は斥候隊であり、ビルマ人に扮して竪琴を弾いて後続の部隊に状況を伝えます。
そのため、兵士たちの物悲しい歌声と清らかな竪琴がジャングルの中でたびたび響きます。
日本軍がイギリス軍に降伏した時に双方が「埴生の宿」を合唱するシーンに涙ぐみました。「戦場のアリア」でもありましたが、歌声は荒ぶった心を鎮め、穏やかで平和な時間を思い出させてくれます。
最も過酷で悲惨と言われているインパール作戦が背景にありながら、残酷なプロセスを見せず、多数の犠牲者が出た結果だけを表していました。なので、戦場の人間ドラマ(フィクション)として観ました。
もっと早くに観ればよかった。
中井貴一版もいつか観よう。
ビルマの竪琴の1956年版、いくつかあり(詳細は割愛)、これは総集編の方です。
反戦映画(とくに日本の太平洋戦争の)を観てきて、リアルに残酷さを描くものがほとんどですが、小説/フィクションだからこそ戦争の虚しさを描けるものもあると感じました。