Tatsu

淵に立つのTatsuのレビュー・感想・評価

淵に立つ(2016年製作の映画)
4.5
舞台挨拶付きで鑑賞。予告を見た時に面白そうだと軽い動機で鑑賞したけど、中身はとにかく衝撃的で、残酷な映画だった。下手な時期に見たらトラウマになってたかも。

とにかく序盤から不穏な雰囲気が持続する。不穏感の一番の要因は一見幸せに見えるが、取り繕ってるようにも見える家族だと思う。新聞にしか関心のない父、祈り続ける母、そして幼い娘。なんとか保っていた「家族」という組織が八坂という異質なものが入り込んできたことでいとも簡単に崩れ始める。この世に絶対に頑丈なものはなく、全てはもろく、何かが少し揺らせば完全に壊れてしまうということを突きつけられた映画だったと思う。

そしてそれらを体現する役者陣はみんな素晴らしかったが、やはり浅野忠信の八坂は邦画史に残るんじゃないかと思う。空気のようなふわっとした存在感で支配してく様は本当恐ろしかった。気づいたらいて、気づいたらいない、そんなようなキャラクターだった。

この映画の登場人物は全編通してあまり感情を表に出さない。絶対に何事もなかったかのように取り繕う。自分の顔を叩かないと涙すら出ない。自分の顔を叩きまくって、最後には淵に立つしかないまでの絶望の映画だと思った。
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