まさなつ

淵に立つのまさなつのレビュー・感想・評価

淵に立つ(2016年製作の映画)
4.0
絶望の淵に立って中をのぞいたら、そこは深田ワールド、、深い深い沼で底が見えない恐ろしさに震えた。

異物混入で崩壊してゆく家族、、という映画かと思ったらそうではなかった。
娘の、「行ってきます」には返事するのに、それに続く妻には返事を返さないとか、食卓での会話でも夫は新聞みながら生返事、、彼が来る前にすでに静かに崩壊している家族。一緒にいて会話もあるのに心が繋がらない。ささいな日常描写に心がヅキヅキする。彼の出現は、それを浮かび上がらせただけなのか。

そしてある事件と第二の異物混入(太賀さん)。そこから映画は反転し加速する。
悲痛な事件を越え、表面的な家族は、その仮面を脱ぎ捨てる。修羅場なんだけど家族らしくなっていく皮肉。もう、観ていて辛いのにどんどん引き込まれていく。

山田太一さんの辛口ホームドラマと呼ばれた「岸辺のアルバム」を思い出したけど、この作品の印象は、どちらかと言えばヨーロッパ的。冷徹なまでに人間の心の奥底を炙り出しながら、眼差しはどこか暖かい。カンヌで賞とったのも納得です。

出演者はみんな素晴らしい。
特に筒井真理子さんには驚いた。

何とも言えない後味で、モヤモヤも残るけど、癖になりそうです。
まさなつ

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