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大切なのは愛することのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

大切なのは愛すること(1975年製作の映画)
3.0
[映画はシシーを救済し得たのか] 60点

旅先でふとMUBIを覗いてみると、ラインナップがごっそり変わっていた。チャップリンが4つ、ヒッチコックが3つ「ケレル」「人生スイッチ」などが入っていたが、その中に以前から見たかった本作品が入っていた。これは見るしかないではないか。というわけで歩き回ったあとホテルで本作品を見たせいか、何ら感情が湧かなかったのだが、それが映画のせいなのか私のせいなのかは判別不能である。

ロミー・シュナイダーは不安定な女優人生を短くも美しく生きた女優である。そんな彼女は1974年当時、最初の離婚を経験し、故郷から売国奴呼ばわりされ、身も心もボロボロだったはずだ。本作品のナディーンも落ちぶれてソフトポルノに出るしか道のない女優であり、どうしてもロミーと重なってしまう。

唐突にキンスキーが出てくるのだが、ズラウスキはキンスキーの取り扱い方を心得ていなかった。キンスキーは画面を支配する力が強すぎるため、使用法を守らないと邪魔になってしまう。本作品ではロミーの同僚としてリチャード三世に出演するのだが、明らかに場違いな感じがする。ただ、自信を失ったナディーン=ロミーにキスして"俺にはこれしか出来ねえ、鏡見てみろ、いつまでもキレイじゃねえか"と言ったのには泣いた。

物語はナディーンに惚れたカメラマンがリチャード三世の劇に彼女を使うことを条件に出資し、ナディーンの夫と三角関係をごちゃごちゃやる映画で至極退屈。題名の"もっとも大切なもの=愛"は勿論主題ではあるものの、根底にある"愛への渇望"の表現が薄っぺらくて全く響かなかった。

ズラウスキとロミーは演出を巡って大喧嘩したらしいが、結局セザール賞を授賞し、ロミーの後半生では最も成功した部類に入っている。なんだかなぁ…
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