脳内金魚

ガール・オン・ザ・トレインの脳内金魚のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

レベッカ姐さんなかなか斬新なとどめのさしかたですね、いや本来の使い方としてはあってる?

アルコールによる健忘は分かるが、眠剤とかではないし若干都合よすぎるとか、あっさり正当防衛の主張通ったの?という安直な印象は拭えない。だが、「依存症」という病気であるにも関わらず、「アル中」という言葉になった途端、それが自制心のないだらしない社会の落伍者という印象に変わってしまう。それを本人も自覚しているだけに、様々な意味で自分に自身が持てなくなるレイチェル。おまけに、妊娠という女性にとって非常にセンシディブな問題も絡めると、一気にレイチェルが危うい人に見えてくる。このあたりの人物設定が非常にうまいため、上記の引っ掛かりもうまく流せた。

母親になりたくてなれなかった人、かつて母親だった人、奪った夫の子を授かり母親になった人。そのあたりの三者三様の母親像の対比も興味深かった。過失とはいえ、かつて子供を死なせてしまった人が再度妊娠するかと思えば、どんなに願っても妊娠しない人。まさに「子は授かり物」なんだなと改めて思ったし、だからこそ欲しくても出来ない人は悩むんだよね。「あんな人でも妊娠したのに」と。わたしは子供はいないし望んでもいないが、周囲に密かに妊活してる人もいれば、あっさり高齢でも妊娠する人もおり、この辺のある種不条理がとてもリアルだった。

「今日 わたしは違う車両に座り前だけを見る」
ラスト、レイチェルのモノローグだ。わたしもついつい毎日同じ電車の同じ車両に乗りがちだ。だから、実は自分を変える一歩は、毎日乗る電車の車両を変えて、外ではなく車内を見てみる。そんな些細な行動なのかもしれないとこのモノローグが非常に心に刺さった。
脳内金魚

脳内金魚