糸くず

ガール・オン・ザ・トレインの糸くずのレビュー・感想・評価

3.8
信用できない3人の語り手によるミステリーとしての華麗さというより、虐げられた者たちの激しい怒りが爆発するリベンジ・ムービーとしての鋭さが際立っている。

『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』で差別に立ち向かう女性たちの連帯を感動的に描いたテイト・テイラー監督は、この映画でも女性たちの連帯にスポットを当てているが、受ける印象は『ヘルプ』と全く違う。

アルコール依存症によって記憶を頻繁に失い、自分も見失っているレイチェル(エミリー・ブラント)が真実を取り戻していく物語は、血と抑圧と屈辱によって出来ている。血にまみれ、ゲロにまみれ、誰にも信用されず、自分のことさえ恐ろしくなり、おびえて泣くレイチェル。何が彼女をそうさせたのか。

自分を傷つけ踏みにじった者が誰か知ったレイチェルは、復讐のために闘う戦士となって現れる。彼女の歩みに迷いはない。わたしは騙されていた。本当の敵を見失い、自分と同じ傷を抱える者たちにも気づかなかった。虐げられる者の孤独と怒りのコントラストをくっきりと描き出したエミリー・ブラントの演技が素晴らしい。

犯人候補の男性たちの描写が抑えられたことで、謎解きの快楽は少なくなっているが、その分、復讐の炎の凄まじさは圧巻だ。イヤミスではないが、覚悟して観るべし。
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