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パリ横断のUのレビュー・感想・評価

パリ横断(1956年製作の映画)
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2019.7.31 恵比寿ガーデン・シネマ #175

『パリ横断』は、ドイツ占領下に置かれたパリを舞台に、ふたりの男が闇市で売る豚肉を鞄に詰めて人目がつかないように運ぶ道中で起きることを点描してゆく。密告、物資の窮乏やユダヤ人の隠匿など当時の社会的・経済的・政治的な細部をジャン・ギャバンの大袈裟な身ぶりや達者な口ぶりによっていささか喜劇的に活写しつつも、ドイツ兵の登場によって作中の雰囲気が一挙に変わる。同時にナチス高官の死の報せによって、広く知られた画家であったギャバンをのぞいて、そこに捕まっていたフランス人がみなどこかに連行されてゆくシーン(報復代わりに彼らを処刑するのかと思ってしまう)の取り返しのつかない感じはかなりこわい(ふたりは道中付かず離れずの奇妙な連帯を築いていたので、彼らがはなればなれになってしまうのを捉えた切り返しショットは胸を打つ)。
とはいえ、パリ解放後にリヨン駅で偶然ふたりが再会するシーンで終わるから一応ハッピーエンド。依然として片方の男がポーターとして、つまり鞄を運ぶ人間として働いているというラストは気が利いている。
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