tomie77

The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめのtomie77のネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

アメリカ南北戦争の最中、南部の女学生エミリーは森の中で怪我を負った北軍兵士マクバーニーを見つける。学園長のマーサはクリスチャンとして敵である彼に慈悲を与え、傷の手当てを施す。回復後に南軍に引き渡す筈だったが、紳士的な彼の態度に、彼を見つけたエミリー、大人びた女学生アリシア、年配の女教師エドウィナ、学園長マーサまでもが好感を抱き、親しみを感じていくが…。

ソフィア・コッポラ監督らしいガーリーさは健在で、晩餐会でのドレスや普段着、それを着こなす女性達がみな可愛く、美しい。

マクバーニーが現れる前から、マーサとエドウィナの間には軋轢があったように見えるし、アリシアも服を着崩す姿から性的に奔放な印象を受ける。それでも表面上は敬虔で穏やかな女性達の暮らしに、マクバーニーという異質な『男』が入り込んだ事で女性達の本性が少しずつ露わになっていくのが怖かった。アリシアは『男』への興味を募らせ、エドウィナは学園を去るのが望みだとマクバーニーに告白し、マーサは晩餐会でエドウィナの装いを淑女らしからぬと暗に蔑む。
彼女達の間にじわじわ波風が立っていき、今にも破綻するのではないかという不安と緊張感が常に付き纏った。
結局は元凶となった『男』の排除によって綻びを覆い隠し、また元通りの暮らしに戻る結末が何とも後味が悪かった。

マクバーニーが礼儀正しい青年なのか、粗野な乱暴者なのか明確にせず、野蛮な本性をあらわした男を女性が退治するという単純な話になっていないのが良い。
唯一、心からマクバーニーを愛し(ていたように見える)、彼の排除に加担せず、知りもしなかったエドウィナのその後が気になる。この後も学園で変わらぬ日々を過ごせるのだろうか。もしかしたらマクバーニーに代わり、この女性達の世界を完全に壊すのは彼女かもしれないと想像せずにはいられない。
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