幽斎

The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめの幽斎のレビュー・感想・評価

3.8
Thomas Cullinanの小説2度目の映画化。1971年の問題作「白い肌の異常な夜」Clint Eastwood主演で「アレがターニングポイント。綺麗事にウンザリしてた」と語る。つまりリメイクですが、Sofia Coppola監督は1971版をリメイクした訳で無い的な発言をし批判される。「アメリカ最後の良心」とまで言われるEastwood御大をリスペクトしないとは!。次に1971版は黒人奴隷が重要な役だが、本作は登場しない。更にエドウィナは黒人と白人のハーフだが、Kirsten Dunstが演じる。これ「ドント・ブリーズ」のレビューでも触れましたが、ポリティカル・コレクトネスとしてアメリカで論争に為る「名作を汚すホワイトウォッシングだ!」と。日本でも大坂なおみ選手がCMで白人化したと非難され日清食品が謝罪した。Coppola監督は「女性だけの世界に焦点を当てたかった」と述べてる。つまり、女性の価値観を描き直したいのだと観て思ったし、私も監督を支持する。

女性視点に変えると簡単に言うが、どう語り直すのか才能も試される。単なる男と女の本性で無く、立場や年齢や個人の思想も人其々、女性を一括りな固定観念で描くのでは無く、名前がある以上別々のキャラクターとして描く事で、原作に近い内面に迫る事に成功してる。

マクバニーは何を間違えたのか?それは女性の生存本能を甘く見たから。自らの愚かさで足を失ったが、足は男の大事なアレを指すと思うが、正に自業自得。アメリカ版ポスターは顔すら見切れてる。日本版は何処に居るのか分り難い(笑)。男はその程度の存在なのだ。

映像美も秀逸。絵画をめくる様な静止画的美しいシーンの数々、時代背景を考慮した太陽光と蝋燭をメインとした照明、戦時中で有る為衣装も洗濯を重ねた様な質感で、ディテールに拘る監督のセンスは手放しで褒めたい。

Nicole Kidman、流石の存在感で、カンヌ70回記念賞おめでとう!レビューした「聖なる鹿殺し」(脚本賞受賞)と共にパルムドールWノミニーの快挙。しかし、この作品は演技的にはKirsten Dunstに尽きますね。
作品の裏テーマは「女性のマウンティング」。食堂にマクバニーを招く時、出来る限りのお洒落をして表れる、年齢や序列に関係なく。女性でも攻撃性や闘争心は有るのだ。女性が受け身だった時代は、とっくに終わってると語り掛ける名シーンだ。

カンヌで女性として56年振り、2人目の監督賞受賞はフロックじゃない。才能で世論を黙らせた監督の次回作も期待したい。
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