クシーくん

捨小舟のクシーくんのレビュー・感想・評価

捨小舟(1923年製作の映画)
3.7
キートンの作品の中ではアクションも物足りず、やや凡作の側に入ると思う。
ただブラック・ユーモアは今までの中でも群を抜いている。殺人と死を軽々しくエンタメにしても当時の人々も笑える度量を持っていたということか。

失恋したキートンが傷心を胸に小舟で外洋に飛び出す。遭難の末に捕鯨船に拾われるが、船長が癇癪を起こすと船員を海に叩き出す恐ろしい人物と来れば、その船長をおちょくるドタバタコメディとなるのだが、
船長の運命が余りにも恐ろしく、いくらギャグでもそれは笑えないぞ…と思いきやまさかのオチ。小船を動かせないなら水の方から来て貰えばいいじゃないという発想の柔軟さには脱帽。

キートンにしては珍しく、ロケではなくほとんど室内劇らしいのも特徴的か。構図がいつもとちょっと違って面白味がある。

キートンの相棒や上司や悪役を長らく務めてきた巨漢”ビッグ”・ジョー・ロバーツの、キートン作品としては最後の短編出演作である。
本作と同年に、長編映画「荒武者キートン」と「恋愛三代記」に出演し、脳卒中でお亡くなりに。
また、同じくキートン映画の常連ヒロインであるヴァージニア・フォックスもキートン作品として本作が最後の出演。これ以後キートンはしばらくの間長編作品に注力する事を鑑みても、キャリア転換点というべき作品だろうか。
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