半兵衛

丘の半兵衛のレビュー・感想・評価

(1965年製作の映画)
4.5
第二次世界大戦下の砂漠の中にそびえ立つ陸軍刑務所を舞台に、サディストな司令官や看守に支配されている刑務所でおこなわれる訓練という名のリンチに苦しめられる囚人たちの苦難を描いた異色の戦争映画の傑作。タイトルでもある『丘』を灼熱の太陽のもと何度も登らされて精も根も尽き果てる囚人の姿を執拗に描くことで、この刑務所の異常性や戦争の狂気、ひいては自分の世界に固執する支配者の怖さを描いている。あと司令官を演じる役者の怖さも半端なくて、この映画の重圧された世界観を増幅させることに成功している。

中盤ある登場人物の死をきっかけに主人公であるショーン・コネリーが立ち上がり、司令官たちに半旗を翻す様は二転三転するサスペンス的な展開、主人公に感化されて立ち上がる囚人や看守の動向もあって見ていてハラハラする。

それでも主人公たちが有利になっていき、このまま司令官が追い込まれるのかなと思いきやさすがはルメット監督。ラスト数秒で作品の根底をひっくり返され、あまりの展開にうちひしがれるショーン・コネリーの悲痛な叫びとともに幕を閉じる。そのあとにもたらされる絶望の余韻は是非見てほしい。
半兵衛

半兵衛