SatoshiFujiwara

丘のSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

(1965年製作の映画)
4.0
観た中ではルメットのベストか、というような出来栄えか。まずは登場人物のキャラクタリゼーションに長ける。兵隊囚人に対しての、矯正とは名ばかりの単なる権力欲丸出しのイビリ野郎と化しているクソ看守長とその腰巾着の新米看守、こいつらの鬼畜なシゴキに対して目に余ると思いながらも煮え切らない態度を取りながら最後にはついにキレて告発への勇気を振り絞る軍医、看守長と新米看守の横暴に対して反発する良心的な看守、そして兵隊囚人5名。実に生き生きと、かつ明快にそれぞれの人物が映画内で躍動している。微塵も曖昧さがない。これはこの手の映画では必須だ。

そして、彼らの演技の特質を余さず掬い取るカメラワークの巧みさ。冒頭、「丘」の頂上で遂に倒れ込んだ兵隊囚人を看守達が掴んで下ろすシーンをほぼ横から捉えたフルショット〜刑務所の外までに至るクレーン&移動撮影による長回しにまずは引き込まれるが、クローズアップや仰角&俯瞰の多用(仰角は看守の威圧感と非人間性を、俯瞰は刑務所の官僚的な全体像を照らし出す)、囚人たちを捉えたシーンでの横移動やカメラの上下運動がその都度素晴らしいダイナミズムを生み出す。

そしてラストシーンの急転直下。どう「急転直下」するのかはご覧頂くとして、とにかく苦い。苦すぎる。余りにルメット的である。
SatoshiFujiwara

SatoshiFujiwara