たく

丘のたくのレビュー・感想・評価

(1965年製作の映画)
3.8
イギリスの軍事刑務所で長年にわたって行われている懲罰的な訓練に苦しむ囚人たちの理不尽な状況を描く、シドニー・ルメット監督骨太の1作。人物のアップやパンフォーカスを多用した独特のカメラと素早いカットの切り替えが、どこか人工的で乾いた映像感覚を生んでる。

鬼軍曹と看守がつるんで反抗的な新入りの囚人を徹底的にしごき倒していくのがとにかく胸糞悪い。一人の気の弱い囚人が狂っていくのは「フルメタル・ジャケット」を思わせた。
題名の基になってる刑場の中央に設けられた人工的な丘を昇り降りさせるのが過酷な訓練の象徴となってて、スティーブンスがガスマスクを付けてやらされるシーンが怖かった。
ついに事件が起きて囚人達が抗議の声を上げる場面で、軍曹の演説で囚人達を大人しくさせるのが妙な貫禄があって圧倒された。
キングに対する露骨な黒人差別が描かれて、そこから終盤のキングの開き直りが事態を動かす鍵となってるのがある意味胸のすく展開。看守のウィリアムが微塵も人間らしさを見せないサイコパスとして描かれて、最後の最後まで絶対勝ち目ないだろなーって思って観ていくと、あっと驚く皮肉なラストに複雑な気分になった。
たく

たく