Jeffrey

シベリアからの手紙のJeffreyのレビュー・感想・評価

シベリアからの手紙(1958年製作の映画)
3.5
「シベリアからの手紙/ある闘いの記述」

冒頭、豊かな土地のロングショットと民族の歌が聞こえてくる。ここは遠い異国シベリア。世界で最も広大な地である。白樺の林、愛の言葉、電柱を登る男。今、遊牧民たちの生活が映される…本作はクリス・マイケルが1957年と61年に監督したアニメーションやアーカイブを取り入れた作品で、この度DVDを購入して初鑑賞したが素晴らしかった。

まず、シベリアからの手紙に言及する。

1917年のロシア革命から5年後、1922年に成立した人類初の社会主義国家ソビエト連邦。これはどんな人でも知っていることである。そして第二次世界大戦終結を経て、1957年にマイケル(本作の監督)は劇作家であるアルマン・ガッティらとその旧ソ連東部にあるシベリアを訪ねたとのことである。この作品の面白いところを言うならば、シベリアの街と風景、革命体制を信じている人々と特権的暮らしをする党幹部をマンモスのアニメーションやアーカイブ映像を使ってナレーションとユーモラスな演出で描いているところだ。


この作品は「レベル5」と打って変わって非常に好みである。まず、冒頭の美しい白樺の林のファースト・ショットから魅力的である。そして民族の合唱が聞こえたり、ナレーションが様々なものを語る演出が非常に居心地が良い。なんともフランスの秋を彷仏とさせる紅葉の美しさが前面に押し出ている。まさに原風景の心が写し出されている一本てはないだろうか。

小さな村にいる人々、小動物の群れ、暮色、シベリアのレナ川や小さな集落、アヒルの群れや可愛らしい狐、鷹、マンモスと言うアニメーションを使っての可愛らしい解説などが非常に好みである。たかが60分程度しかないため、さらに飽きずに見やすいし素晴らしいものである。それにシベリア横断鉄道のショットは本当に美しくノスタルジックである。

それに少しばかり近代的要素を醸すイルクーツクのダムの描写なども圧倒的である。遊牧民の生活やトナカイの角を切ったり、子供が映ったり、少しばかりアバンギャルドな手法で色素を徐々に薄めてモノクロームの世界にさせたりと面白い実験的な映画である。特に個人的に美しいと思った…というか近未来的な映像だったのがマイナス69度のシベリアで最も寒い雪景色の空撮が非常に魅力的である。

それとやはり小動物が結構この映画には出てくるのだが、それも可愛らしく癒される。当時の人々のカメラに向かっての好奇心あふれる笑顔がたまらなく好きだ。



余談だが、フランス映画評論家でヌーベル・バーグに大きな影響与えたアンドレ・バザンは本作を、シベリアの過去と現在に関する真実を映画でレポートしたエッセイ、ある詩人によって描かれた歴史的、政治的エッセイであると表したらしい。この作品意外や意外に製作群がプロフェッショナルな人たちばかりである。まず撮影にサッシャ・ヴィエルニーが担当している。彼はレネやグリーナウェイの作品で知られている。それからトリュフォーの作品とかの指揮を務めてきたジョルジュ・ドルリュー、音楽はヴェルダ作品を担当してきたピエール・バルボーである。

それからLEVEL5でもそうだったが、本作にも日本の映画である「宇宙人東京に現れる」と言う映画のポスターが一瞬映るのだが何か意味があるのだろうか。彼のスタイルはドキュメンタリーともフィクションとも異なりシネ・エッセイと呼ばれる映像作家として注目されるので、中々風変わりな作家だ。
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