ひれんじゃく

ブレードランナー 2049のひれんじゃくのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.3
びっくりするくらい画面が美しかった。どれだけ計算したんだろう。特にジョイが女性の体を借りてKと交わろうとするシーン。発想が天才でしょ。それに加えて記憶を作る人が森をデザインしてるシーン。あまりの良さに感動した。機械的な美、整えられ計算され尽くした画面構成に終始度肝を抜かれていた。以下ネタバレしてるかもなので注意。


















そして遂に人間と見分けがつかなくなってしまったアンドロイドの話はやっぱりいいな……個人的には前作を見た時よりもその「境界線の曖昧さ」を強く感じた。アンドロイドだけど血は出る、物も食べる、誰かを好きになる、……唯一違う点といえば生殖機能の有無。だったはずが…というのがあんまりにもすごい。前作を見直してないからなんともなんですがデッカードとあの女性レプリカントとの間にそんな巨大な愛が芽生えていたっけ?🤔とは思ったものの、もうここまで来たら何の違いもない。立場くらいしか。あまりの差異の小ささにむしろ感心して見ていた。この世界に人間は残っているのか?とすら思った。仕草や受け答え、発声のしかた、何も違いがないんですよ。外からこの世界を眺める私たちからすると、あの器具で瞳を見ることくらいしかそれこそ見分けようがないんだけど、そのシーンを入れてくれない限りどっちなんだかさっぱりわからない。そのうちどうでもよくなってくる。誰が人間で誰がレプリカントだなんて瑣末な問題でしかない、というように。

だけど実際問題レプリカントが妊娠し出したら人間の存在意義が皆無すぎて焦るよな。それは理解できる。そうなると人工物と生物、レプリカントと人間を分ける最後の砦は生殖機能の有無であり、「人間らしさ」というのは人を生み出す能力とそれに関連する全てに集約されている、と定義づけられるのだろうか。ロボットと人間を分けるのは記憶でも感情でもなく、子供を産める能力があり、子孫に関する選択の余地が残されているかどうか。新しい着眼点で非常に面白い。にべのなさが逆にいい。感情とかロマンチックな方面ではなく、あくまで生物学的に自分達で種を存続できるかどうかっていう冷徹さが今らしくていい。

自分がその「奇跡」だと信じて疑ってなかったKが、真実を知った後にする茫然とした顔とかあまりにも「人間的」すぎて口を開けてた。ジョイとの交歓とかそのほか諸々、物語の後半へとなるにつれどんどん人間へと転げ落ちていくKの表現が素晴らしい。あまりに振る舞いが人間すぎて、真実を知ってもはや何の繋がりも無くなったデッカードを見送るシーンくらいしか模造感がない。あそこでやっと少しだけアンドロイド感が戻ってきたというか。人間よりも少し頑丈だからといって無為の精神がすぎてしまっているからこそのロボットらしさが顔を出したというか、そういう印象を抱いた。最期まで体温で雪を溶かすことを夢見てたところがクソ切なくて最高ですね……
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