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ブレードランナー 2049のrensaurusのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.7
ゆったりと間をとり、必要十分で繊細な演技。SF映画としてシネマティックで印象に残る映像。没入感や陶酔を増幅させるサウンドトラック。ヒューマニティとは何か、という普遍的で核心的な問い。前作あっての今作だが、『映画』としての完成度が凄まじく高いと思っている。

美意識や芸術性を纏っている今作だが、突き放された印象を微塵も感じないのは、レプリカントでブレードランナーである主人公Kが、現代社会を生きる人間そのものであるように感じるからだ。それは、決められたような社会観念や、ルールや正しさの制約の中で、自分の生きる意味や居場所をどうにか確保して、その天命を全うしようという能動的な精神性にある。

人間もレプリカントも、A-T-G-Cという4種類の遺伝情報で構築される生命であることに変わりなく、もっと言えば、今作のジョイのようなキャラクターも、1-0という2種類の情報で構築されていることを見れば、その取るに足らない違いが見られる。劇中、ジョイが命の一回性を望んだこと。Kが記憶を共に刻んだジョイの一個体を愛したこと。Kが自身を特別な子供だと信じたことなどを見れば、その人間味の深さは火を見るより明らかだ。

それでもやはり、『生殖』という神秘の奇跡には、なにものにも代え難い生命の尊厳がある。先代から受け継がれたものを引き継ぎ、一度の命の中で、それらを次世代へと継ぎ渡す。その偉大さを実感しているからこそのKの終盤の行動には来るものがあった。

SF映画であるからこそ強烈に光るヒューマニティがどこまでも愛しい作品だ。
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