高橋早苗

ワンダーストラックの高橋早苗のレビュー・感想・評価

ワンダーストラック(2017年製作の映画)
3.6
ローズは生まれついての
ベンは事故で突然
二人とも聾


ローズにとって 父は支配的で 息苦しい
母を求めてNYへ

ベンは 母が死に 伯母の元に
同じく居場所がない

父に会いたい…その想いが
母の遺品に手がかりをみつける

Wonderstruck(ワンダーストラック)と書かれた本
中にはこんな一文が…


《自宅で物を集めるのも キュレーター
まずは驚きの飾り棚に やがて部屋全体を占める》


そこに挟まれていた栞に記された
“キンケイド書店”の名と
ダニーという名のサインを見つけ この人こそ父だ!とNYへ


ローズは 女優である母からも 冷たくあしらわれ
兄がくれた絵葉書と同じ景色…自然史博物館へ 辿り着く

ベンは “キンケイド書店”を探して 同じく自然史博物館へ


事故で突然、聴覚を失い
自分の世界に閉じこもるのかと思いきや
そこは12歳のなせる技なのか 男の子の無謀さなのか
…ベンは夜行バスに乗って
NYまで来ちゃいますね^_^
(ま、寝床が居心地悪きゃそうもなりますわな)
“キンケイド書店”を見つけたはいいが廃屋同然?


一方 父から読唇術の教科書を押し付けられたローズは
本を破り捨て 長い髪にハサミを入れ
男の子ばりの短髪で単身 NY行きのフェリーに乗り込む

母がいる劇場に入り込めたものの
見つかってしまえば 彼女は叱責するだけ
(聞こえなくったってわかる!)
そして楽屋へ閉じ込め(T^T)



初めてのNY
ドキドキと 期待と 辿り着けるのか不安と
そして落胆と。


ローズが書き付け 船を折り 川に流す「Help me!」の叫び
博物館の中で 同じように書き付け 折り船にして隕石の上に隠そうとする
「わたしは どこに属するの?」の問い

それは ベンも同じ。



…この映画の素敵なところは
聞こえないことを“逆境乗り越え系”のお話にしなかったところ。

ダイレクトに聞こえないことの タイムラグと
見えている世界が とても色鮮やかで
ローズも ベンも
私たちが見ているよりもずっと カラフルな世界に住んでいるのだとわかる。
(子どもの成長ストーリーみたいに、苦労話にも突入しない。それもイイ♪)


子が 親を追うのは
超えるため
ローズは母を ベンは見知らぬ父を

超えるには 一度近づく必要があった
親を探しに行ってるが
二人は親を超えて
自身の人生、歩く場所を
見つけに行ってるようなもの

…NYの街が この映画の 第三の主役に見えてくるわ(´∀`*)



ジオラマは 博物館にあるけど
ヒトの数だけ、ジオラマは作られ続けてる
(…心とか記憶とか 思い出やらSNS なんて場所にね)

“驚きの飾り棚”も
人の数だけ。



物語の終わりに大停電とは なんとも粋な計らい。

どの街を選んでも 誰と生きることを選んでも
光がなければ 何も見えはしないのだから。


“驚きの飾り棚”は
ぜひ本編で観てね♪
高橋早苗

高橋早苗