潔癖症の男と結婚した若妻（七海なな）が、強烈な体臭を発しているトイレ修理業者の男に惹き寄せられてしまう。性的抑圧からの開放を描いている、オーピー配給のピンク映画。R-15版「舐める女」。

本作のヒロインは、男性遍歴ゼロのまま、結婚相談所を通じて今の旦那（木下桂一）と知り合った人物。旦那は相性がピッタリ合う"体臭"の持ち主なのだが、あいにく強度の潔癖症のため、結婚生活では徹底的に体臭を消されてしまう。

ヒロインの一挙手一投足がチャーミングに描かれており、他人のタオルや古着をコレクションしながら、マスターベーションに耽るという"本能一直線ぶり"を楽しませてくれる。女優のつま先の動きまで丁寧に捉える、カメラワークも素晴らしい。

中盤部に入ると、妻と修理業者の男（沢村純）、夫とSMクラブの嬢（青山真希）が、同時進行で逢瀬を重ねていく。女性鑑賞者から拒絶されるかも知れないが、男の古着を使用済みの生理用品に置き換えて、男女逆転の物語を想像してみるのも、また一興。

極度の潔癖症な夫と匂いフェチな妻。妻の鬱憤が溜まり、抑圧された欲望が爆発することを夏の暑さから発する汗と肉体が交わる汗で描写することに唸らされる。嗅ぐ行為を繰り返し、舐めることが崇高な行為のように感じることにも。
「舐める女」のR18版

勝手に城定祭り８作目。第29回ピンク大賞最優秀作品賞。U-NEXTで。

極度に潔癖症の旦那と、極度に匂いフェチの妻。旦那に隠れていろんな汗臭いアイテムを収集してる。主演は河合塾のCMに出てたでおなじみの七海なな。今作もメガネずれ落ちてます。

およそ家族とは呼べないような形式張った家庭だったのに、夫も妻も別々の場所で「調教」を受けて解放されてゆく。どんどん人間らしくなってゆく、ともいえる。

ラストの七海ななの笑顔で不覚にも泣いた。誰にも真似できない。アカデミー主演女優賞あげたい。

「絶対泣けます！」とか宣伝してるくせに単に人が死ぬだけの映画が今までに3000本くらいあったけど、この映画は誰も死なないのに泣けるんぞ、と声を大にして言いたい。


嗅覚って、個人的には五感の中で一番思い出と結びつきやすい。だから潔癖症と匂いフェチとではどちらがより人間的かと言うと、だんぜん後者だと思う。まぁ最近のニオイって、だいたい洗剤の匂いかもしれないんだけどね。