イスケ

ありがとう、トニ・エルドマンのイスケのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

トニ・エルドマンが出てくるまでの展開に小津を感じた。

場違いなところに連れて行かれて放置されるあたり。特にショッピングモールでベンチに座る姿を背中から撮ったショットがかなり頭に残ってる。

あれ、東京物語の笠智衆の哀愁と重なりますね。


親の心子知らずとはいえ、親が愛を注いでくれてることはイネスだって分かってるわけですよ。でも彼女にとって今はそれじゃないんだ。

イネスがベランダから父を見送った後に涙を流してた気持ちはまぁ理解できるのよね。。


そして、一番良かったのは、ヴィンフリートがピアノを弾いて、イネスが歌うシーンかなぁ。
あの瞬間に昔の二人の関係性が見えた。

昔は一緒に笑ってくれたし、もしかしたら入れ歯でも遊んでふざけ合っていたのかもしれない。

ふとした時に父の行動に対して、笑いが込み上げて堪えるのに必死になるところとかとても温かい気持ちになったなー。

イネスが逃げるようにしてあの場を飛び出していったのは怒りの感情というよりも、
ブカレストで積み上げたものが、父の愛によって陥落させられそうになったからだと思う。


あの頃のイネスがそのまま戻ってくることが無いのは、ヴィンフリートだって分かってるでしょう。

ただただ、娘の身体と心が幸せであって欲しいと願う父の姿に胸を打たれた。


オフビートなコメディの塩梅も◎

親父が入れ歯を気に入ってポケットに入れて持ち歩いてるという設定自体ももちろん面白いんだけど、どちらかというとイネスの反応とか一人で部屋にいる時の感じがジワジワくる。
イスケ

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