★
ある人生の転機を静かに力強く描いた社会派ドラマ作品。
診療時間をとっくに過ぎた午後8時に鳴ったドアベルに若き女医ジェニーは応じなかった。その翌日、診療所近くで身元不明の少女の遺体が見つかる。それは診療所のモニターに収められた少女だった。
少女は誰なのか?
何故死んだのか?
ドアベルを押して何を伝えようとしていたのか?
『あの時、ドアを開けていれば…。』
淡々と紡がれていく、織物や編物の様なストーリー展開。サスペンスなスパイスを感じながらも、そこは監督作品の魅力である「人間の本質」が描かれています。
若き医者を務め患者と向き合う日々を過ごしていく彼女は、ドアの向こう側に居た彼女にどの様な感情を抱いていたのだろう?医者・女性・人間として、あの時自分に何か出来る事があったのではないだろうか?誰からも強制されないであろう罪の意識から、動いていく彼女の目指す場所には、午後8時に至るまでの道のりを示す道標が散りばめられています。結果は変わらない。けれど、自らが動く事で変えられる何かが見えていたのかな?厳しい社会で慈愛に満ち、誰にでも寄り添う姿勢で接するジェニーが眩しかったです。