きのこ

愛を綴る女のきのこのネタバレレビュー・内容・結末

愛を綴る女(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

人を愛するって難しいんだよね。
ガブリエルの表情がとても印象的だった。
ジョゼのときと、アンドレのとき。
表情というかもう、自分が本当に心から愛する人と…って、画面全体から幸せが溢れ出ているのが伝わる感じ。
でもね、それでもなんだかジョゼのときのように淡々としてる気がして。
アンドレで満たされているはずなのに、どこか上の空みたいな。
なんでだろうと思ったら、最後にわかりました。
そういうことだったのね…

もうジョゼの愛情に涙するしかなかった。
-君に生きてほしくて-
この最後の一言で泣いた。
ジョゼ最高、人間が出来すぎている、素晴らしい(;_;)

正直途中までは、ガブリエルに共感できなかった。
アンドレに出会い、愛し愛する幸せと喜びを知り、夫であるジョゼにそれを知られながらも思いを貫き続ける。
望んだ結婚じゃなくても、ジョゼを愛していなくても、なんて身勝手で、傍にいる人の気持ちを考えていないのだろうと思った。
ジョゼが、ふざけるな、と怒鳴るのも当然だと思ったの。
いくらはじめは愛のない結婚でも、ちゃんと相手がいるのに失礼すぎると。(でも逆に、そのまま関係を続けるのではなくてちゃんと打ち明けたり、最後も望むなら出ていく、というのはしっかりしていると思った)
でもきっと、ジョゼの怒りはそれに対するものではなくて、ガブリエルを大切に思う気持ちからだったんだよね。
何馬鹿なこと言ってるんだ、それはできないんだ、どうやったって叶わないんだよ、って。
でもそれは言えない。
アンドレは、ガブリエルの理解者であり、生きる希望だったから。
ああもう本当に、なんていい人なんでしょう、ジョゼ(;_;)

それによく考えたら、ガブリエルの気持ちもやっぱりわかるのよ。
どうしても埋められない孤独とか寂しさとかってあるし、周りにもそれを理解出来るほどの人が居なかったりする。
だからメンヘラとか重いとか怖いとか変人とかっていう扱いされちゃう。
でもそうじゃなくて、まあメンヘラと言ってしまえばそれまてで間違ってはいないけれど、生き方が不器用なだけだと思うのです。
自分に正直に生きすぎてまわりが見えてない。
ガブリエルにイライラした、という意見が多い中で、気持ちがわかるとか言ってしまうわたしはたぶんガブリエルと親友になれます。

気づかないだけで、大切な人やものはすぐ近くにあるんだよ、時間がかかってもそれを見つけられるといいね、というのを教えてくれる、とても素敵な作品だった。
早く気づくことが出来ればいいのだけどね。やっぱりなかなかね。
自分の理想とか、上手くいかない苛立ちとかあるからね。
そんなすぐにはね、穏やかで居心地がよくて、普通だけれどそれこそが幸せ、という日々や、それを共にする人に気づくことができないのよね。
別にそれは、妥協でもなんでもないんです。
ガブリエルは17年かかったけれど、気づくことが出来る人もいれば、わからないままの人もいるんだろうなあ。
ジョゼに出会えて、心を通わせることが出来て、お互いを受け入れて、やっと居場所を見つけたガブリエルは幸せだと思う。

時代が違えば恋に落ちていただろう、とアンドレは言っていたけれど…
違う時代で恋に落ちてお互いを激しく愛しても、このふたりはきっと、いい結末にはならないだろうと思う。
似たもの同士傷の舐め合いで、たぶん、最後は愛というよりも依存になりそう。
だから本当にジョゼがいてよかった。
なんて偉そうに言ってしまった🙇🏻‍♀️

はあ、これは本当に観てよかった…
きのこ

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