すず

わたしは、ダニエル・ブレイクのすずのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

こんな辛いことありますかってくらい観ていて辛かった。決して綺麗事では終わらせない、強い問題提起を感じる映画だった。イギリスの貧困層や生活困窮者を描いた作品だけど、これはイギリスに限った問題ではない。失業者、求職者が溢れフードバンクに列をなす人々。助けを求めてやって来た人間をいなすかのように、お役所は淡々と形骸化した流れ作業をこなすだけ。

他方で、地域コミュニティの関係が希薄な現代において、相互扶助の大切さを説くハートフルな描写が多かったのも印象的。ダニエルとケイティ親子の交流シーンはこの作品の救いだった。人間の温かさにも冷たさにも涙を流し、ラストのメッセージは強く胸を締めつける。

アマプラのあらすじ書きによれば文部科学省特別選定作品とのことで、役所ひいては国への皮肉や批判が込められた本作の意図とメッセージをちゃんと理解しているのか?『隣の誰かを助けるだけで、人生は変えられる』は賛成だけど、立場変わればこれは単なる美辞麗句である。真摯に受け止めて救えるはずの人間をしっかり救うシステムを多角的に見直す意味でも、この作品は特に政府関係各所の人間にこそ教材にさせるべき映画。
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