140字プロレス鶴見辰吾ジラ

お嬢さんの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

お嬢さん(2016年製作の映画)
4.7
”本懐”

キマシタワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!

”エロい”と聴いていた「お嬢さん」。
”変態”とも聴いていた「お嬢さん」。
”卑猥な単語が飛び交う”とも聴いていた「お嬢さん」。

変態という名の紳士なのか?
紳士の仮面を被った変態なのか?

これはまったく素晴らしい!美しい!!
天を穿つ聖なる性なるキマシタワーリングインフェルノ!!!
最後は想いに身を任せてレリゴー!レリゴー!!レリゴー!ゴー!!

喜怒哀楽に情が加わり絶妙なまでの緊張と緩和が織りなす、情熱的で冷静でシュールな世界に切り込む「えっ!?」となるギャグの体温が心地よい。そして子役に対して待ち受けるタイムリミットサスペンス的な○○。

2016年は邦画の魔法であった。
2017年は韓国の大逆襲である。
早くも今年度ベスト級の作品が韓国映画から2本も!!

今作は3部構成で、第1部はそれこそ身分の低い侍女とお嬢様の遭遇と接近と恋模様を豪邸という非現実空間で進行させる、所謂おとぎ話的な外連味と現実のデフォルメとギャグ化を図り、その中で揺れ動く純度の高い想いを熱量に加速させる仕様。そしてその先に待ち受けるもの・・・

第2部は、第1部で侍女視点だったストーリー展開をお嬢様視点で描くサスペンスにグッと寄っての再構築。シーソーゲームのように第1部のストーリーを補完。特に第1部で散見されるギミックやアイテムの伏線の回収が実に計画的で鮮やか。目につきにくいような伏線がないため、こちらの思考範囲を逸脱しない配慮も1部と2部でうまく描いています。

第3部はクライマックスに向けての配置と爆破、配置と爆破。スターウォーズでいうエピソード456→123→そして789というような進行構成。全体として外観は”エロ”映画、”変態”映画としておきながら、中身のサスペンス要素やシーソーゲーム要素が、テクニカルにステータスを置いておらず、さらにアート映画路線でもなく、テクニカル×アートに加えてエンターテイメント性がしっかり手綱を引いているのは大きく高揚感につながります。昨年で言えば「マジカル・ガール」のような”遠くまで物語と来てしまった”感覚を用いながら、はっきりとカタルシスあるエンディングに向けて登場人物の幸福を願い、罰せられることを願えるワクワクした高揚感が満ちていて非常に満足できる仕様。

エロチカルな性癖を恐怖的にまたフェティズムに演出し、お嬢様と侍女での感情の静と動のバランスの比率もわかりやすい。ようはバカな部分が際立つ演出もあるのですが、その絶妙さが気の利いた”ギャグ”の挿入点としての機能を向上させていることも目を見張る。

陰鬱な土砂降りから始まる韓国映画としての記号的ダウナー演出から、最後は晴れ渡る本能の趣が心地よい素晴らしい作品。

現在は、コクソン→沈黙→お嬢さん

LAは夢はあるが、魂(歪で純粋な)はない!といいたくなる