2017年に見逃した映画を回収してくシリーズ。
大好物の『別離』を撮ったアスガー・ファルハディ監督の最新作ですね。
この監督、何が良いかってとにかく映像の抑制具合が素晴らしいのです。
仕立てはサスペンスなのに、おどろおどろしい演出が抑えられ、かと言って単調でもなく、まるで上質なドキュメンタリーを見ているような日常系映画に落とし込まれている独特な感動を味わえますの。
あれは緻密に計算されて作られているとも言えるし、狙ってやったからと言って決して簡単にできるものではありません。
小説を読む際に、圧倒的に好みの文体に出会った経験のある人なら分かると思うのですが、映像の質感(というか全体的な緊張感と落ち着きのバランス?)のようなものが、僕にはどんぴしゃりとハマってしまいましてですね、はい。
(ちなみに小説で言えば、高校時代にカズオイシグロの作品を初めて読んだ時の感動がまさにそれでした)
アカデミー外国語映画賞をとるにあたっては、イスラム文化に対する批評性だとかプロットの秀逸さだとか能書きが色々とあるのでしょうけど、やっぱり映像の独創性が一番だと僕は思うのです。
この楽しみ方を見つけてしまってから、本当に映画が好きで好きで堪らなくなったのです、僕の場合は。
極々個人的な、"映画"の楽しみ方を教えてくれた最高の先生として、アスガーファルハディには頭が上がらないと、そういうわけであります。
だし、なんだかんだ言って、娯楽映画としても一流の作品に仕上がっているあたり、もう流石としか言いようがありません。
点数を付けるのがホントに烏滸がましいけれど、次作も楽しみで仕方がないですね。