りふぃ

オリ・マキの人生で最も幸せな日のりふぃのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

実在したボクサー、オリ・マキについての映画。スポーツ系物語にしては珍しく、負けの姿勢を肯定した作品だった。

映画に限らず、スポーツ作品は大抵、主人公が紆余曲折を経て「負けたくない気持ち」を育て、最終的にライバルと接戦を通して互いのこれまでの日々を思い合い、白黒はっきり勝負をつけて終わる。
しかし、オリ・マキは違った。
彼にはそもそも「負けたくない気持ち」はなかったし、それを育てるつもりもなかった。ただただ好きな女性と共に穏やかに過ごしていきたいという願いがあるのみ。
その結果、15ラウンドある試合で2ラウンド負けになってしまうのだろう。

スポーツは純粋に勝負するだけのものではないことを本映画はまざまざと見せつけてくる。スポンサーがいて、勝たせたい人々がいて、名誉を求める人々がいて成り立つのだ。オリ・マキのような本来としての「スポーツ」を求める選手は世界王者にはなれないのだろう。政治が必要だ。

なんだか、こんな時期に見てしまったのでオリンピックのことを思ってしまった。あれももしかすると、最早スポーツの祭典ではないのかもしれない。

P.S.
人物の表情の撮り方がすごく良かった。視線の動きを映すことで、登場人物たちが何を考えているのか表現しているのにグッと来た。モノクロだったため、余計な情報が入ってこないという点も良かったのだろう。
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