不在

オリ・マキの人生で最も幸せな日の不在のレビュー・感想・評価

3.2
作品の配給によるとこの映画はヌーヴェルヴァーグ風とされているが、それよりもボクシング版『8 1/2』のような印象を受けた。
その主人公グイドは自分に投資し、支援する人達からのプレッシャーや期待を一身に背負いつつも、仕事に熱が入らず恋愛に身を投じてばかりいる。
そんな状態で適当な作品を拵えても、彼の名前に傷が付くだけだ。
プロデューサーらは資金を失うだけで済むが、監督はそうはいかない。
そういった葛藤の中で、極限まで追い詰められた彼が最後に選んだものは映画の完成ではなく、むしろそれを全て放り出した先にある究極の自己肯定と愛だった。

本作のオリ・マキも似たような境遇にある。
自分が好きで始めたことが、やがて他人の利益に結び付いていく。
自分の一挙手一投足が、誰かの金になる。
彼は他人の為のボクシングを強いられているのだ。
しかし人生は仕事が全てではない。
そこで振り返った時に、ようやく本当の人生が見えてくるのだろう。
不在

不在