ようすけ

オリ・マキの人生で最も幸せな日のようすけのレビュー・感想・評価

4.4
映画を観ても泣くなんてことは無かったが、試合後に座り続けるガールフレンドの表情を後数秒長くアップで写していたら涙腺崩壊していた。

この作品は試合前に恋に溺れる話ではない。
それはガールフレンドがとっくに気がついていた。
自信なさげの挑戦者。闘志が見えず対戦相手に花束を渡す始末。
記者会見でも上の空で彼女を見ていて質問を聞き逃す。これで相手が挑発とかしてきたらまた違ったのだろうがとても紳士的であまり描かれていない。
静かな挑戦者への人々の期待は殆どなくてチケットも売れ残り。ただフィンランドで世界戦が行われるという価値だけ。周りを煽ったり盛り上げることができるオリではない。それができるのは明らかに実力で相手を上回っていると確信できる時だけだろう。
一般人も気が付かないし気が付いても扱いに困っている。
さぁお膳立ては揃ったぞ、と思って試合を観た。

これは挑戦者の物語ではなく、そのガールフレンドの物語ではないか。オリの心中を完全に見抜いている。

「何も求めていないのになぜ私が失望するの」は名言。

物凄く聡明で誰よりもオリを理解している。

オリは彼女を幸せにできそうだな。
いや、逆か。
ようすけ

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