このレビューはネタバレを含みます
「テロ事件の話」ではなく、「ある日突然テロ事件に巻き込まれた一人の少女の話」
2008年に起きたムンバイの同時多発テロについて知るための導入としては、タージマハルホテルでのテロを群像劇で描いた『ホテル・ムンバイ』を観た方が良い。
けれどこの作品もまたテロ事件を体験した女性の実体験を基にした作品なので、違う側面として観ると興味深い。
あの事件の中で全体像を知り得た人はいない。様々な人々の記憶や記録の断片を集めたのが『ホテル・ムンバイ』ならば、これはその断片の一つ。
「何があったか分からないけれど恐ろしい何かが起きている」という恐怖感は、ノルウェー連続テロ事件を描いた『ウトヤ島、7月22日』に近いものがある。
恐怖を感じながらも何も見ずになんとか生き延び、後で情報を知り再び恐怖に震え、また何かが起こるのではないかという恐怖に怯えながら生きていく。見えないけれど消えない傷。