韓国の大企業の過酷な労働環境と熾烈な就職戦争を告発する現代の怪談。
何よりも魅力的なのは殺人犯であるキム課長を演じたペ・ソンウの怪演である。見た目はなだぎ武のようであるが、黒沢清の映画に出ていても全く違和感のない不気味さを発揮している。車を覗きこむ姿は亡霊のようでありながら、血まみれのシャツを身に付けたままパソコンに向かう彼は生きている人間としての存在感で威圧してくる。見事である。
この映画は怪談としての面だけでなく、会社内の怪事件を刑事が捜査するミステリーとしての面も持っているのだが、ここを語るのはなかなか辛い。
というのも、ミステリーとしては穴だらけで、魅力に欠けるのである。
最大の欠点は、終盤の大量殺人がほとんど衝動的で荒っぽいものであるにもかかわらず、一番の容疑者が無視されて逮捕すらされない点である。どう見ても警察が無能としか思えず、ミステリーの体をなしていないのだ。
社会派ミステリーと現代の怪談の融合に果敢にチャレンジしているものの、監督デビューのホン・ウォンチャンには少し荷が重すぎたようだ。