このレビューはネタバレを含みます
ナックスにしては壮大すぎるストーリー。いつも通りのメンバーを増員せざるを得ないのもわからなくはないけど、結果ガチャガチャして収集がつかなくなった感じが否めない。戦国時代というスケールを採用したことがそもそもミステーク。
戦国時代をなぞらえながら、独自の解釈で家康に着地したが、これもまた多すぎる主役でなにを軸に物語が展開しているのか、主軸がはっきりしなかった。もちろん主演は妖艶な磊落さを放った織田信長だろうけど、家康に着地しなくてはならなかったのは脚本のしっかりした軸がなかったせいではないか。
もう一つ、今回音楽やSEが豊富すぎてうるさかった。オープニングのテーマソングから始まり、刀のSE、各所で流れるインスト、全てくどい。カメラワークや編集もだいぶ工夫しているけれども、本来の舞台ではありえない見せ方は逆効果だったのでは?
ついでに、シーンの切り分けが多すぎ、小道具の多すぎ、それで舞台がうるさくなってしまっている。つくづく、テーマとして選んだものがミステーク。
コンポーザー
Filmarksに登録されていないので、ここに追記
3.4
料理の仕様によってはもっと美味しくなるドラマ。だが、今のままではキャラクターに入れ込めない。
ベートーベンの悪辣さ、息子の死を経て変化した心境、そこが表現されていないのだ。大泉のベートーベンに重さがない。雄々しく猛々しくない。人間そのものが小さく見えてしまう。
シューベルトとカールの関係性、シューベルトがいかにベートーベンを尊敬している様も存分に描かれているとは言えない。
また、モーツァルト、もっともっと絶望の権化であるべきなのだ。迫力がない。取り憑いて呪い殺すような、何かがないんだ。
また、どんなアホが撮ったのか、基本的に見切れているのがすっごい気になる。これはジョークなのか? モニターを見もせずにシュートしているだろうか? 明らかに、失敗。
音楽もどうなんだろう。第九をマイナーにして絶望感を出すあたりにチープさが漂っていてなんとも田舎臭い。来て欲しいところで音楽を鳴らしてくれない。最後まで出し惜しみをして、バーンと第九を発表して欲しかった。
ルーザー
4.7
チームナックスの最高傑作。それぞれがいい持ち味を出していて、半纏のカラクリも見事に機能している。
特に土方の山南を切るところ、どちらも本当に耐えて耐えての刀合わせ。最高だ。史実に反していても、あんなふうにお話を広げていける、その想像力に乾杯である。
このお芝居は見事なまでにしっかりとした軸が通っている。新撰組と維新志士じゃあ当たり前なんだが、そこに現代のフリーターをメインに据えることで、素晴らしい信念の物語となっている。
エピローグまできっちり感動させて終わる。このお芝居に限ってはギャグやお笑いのシーンはかなり薄く仕上げられているが、それがまた新撰組の硬派さを醸し出していて、最後にしっかりとグッと盛り上げている。
これほどの台本を書けるって、リーダー本当にすごいなぁ