ルサチマ

デジレのルサチマのレビュー・感想・評価

デジレ(1937年製作の映画)
4.3
典型的な階級差ラブコメで非常にわかりやすいギトリだと思うけど、これなら同時代のアメリカのスクリューボールコメディの方がアクションと語りのテンポの両立という点では評価されて然るべきかなと思う。濱口竜介のトークで、個人的にどうしても映画に対する見方として相容れないと思ったのは、濱口は映画を現代的な視点から捉え直すという映画の歴史化をなす見方をしてると感じてしまうところで、そうではなくて『デジレ』なら『デジレ』の時代の中に自らを位置付けて映画に応接すべきだと思っている点だ。
唯一、欲望と道徳の中から倫理が立ち上がるという話はその通りだと思うが、ギトリの映画を現代的な視点で、欲望の描き方という点から擁護したり、演劇のように俳優を中心に据えて映画を撮る形式について評価するというのは完全には同意できない。同時代にはフランス国内でもデュヴィヴィエのような演劇的(この演劇的という言葉の捉え方も曖昧だけど…)に映画を撮影する作家はいたし、語られる内容という点ではスクリューボールコメディの作品にも当てはまる。何でもかんでも現代的に見直したときの文脈で再評価しようとしなくたっていいし、もちろん芸術的な普遍性を強調したりしなくたっていいと思うが、少なくとも映画に応接するときは自分の置かれた現代の価値判断基準からは離れたところにいたい。
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