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デジレのzhenli13のレビュー・感想・評価

デジレ(1937年製作の映画)
4.2
この日観たなかでは一番素直に面白かった。ほかの作品と違ってレイヤー無しの直線的物語進行が成立してるからかもしれない。そして役者のアクションが多い。意図的に会話のみで、または一人語りで進行するのがギトリ作品の特徴ともいえるが、本作は役者それぞれの挙動に活気があるし、ギトリも役柄が召使ということもあり、ほかの作品にみられる朗詠調ではない控えめな喋りが多くて観やすい。しかし最後の長い独白はギトリの面目躍如となる。

特にギトリ、アルレッティ、ポーリーヌ・カルトン、三人の従者らの挙動が同期され、アビーロードみたいに縦列で動いて流れるように従者の仕事をこなす。しかしそれは最後のギトリ=デジレによる長い独白で、「自分の意思を持たず命令される快感」であるという心理となる。女主人を好きになってしまう、女主人しか愛せないかもしれないことは、代々召使のプロを生業としているデジレにとっては致命的ということで、珍しく恋愛の道徳観で悩む。

アルレッティはギトリ観るまで『天井桟敷の人々』くらいしか知らなかったけど、ここではコメディエンヌぶりを発揮して魅力的だった。

オープニングはやはり役者はじめ制作スタッフがギトリのナレーションにより丁寧に紹介される。
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