平田一

北の零年の平田一のレビュー・感想・評価

北の零年(2004年製作の映画)
2.5
これこそ大河で取り上げるべき題材に思ったし、映画では掘り下げにやはり限度がありますね。

維新後に起きた事変で北海道移住開拓を政府から命じられた四国・淡路の稲田家の人たちの物語。日本がこれまで手掛けてきた時代劇とは異なるものを作ろうとしていたことを何となく感じられ、加えてかつてタランティーノが「歴史の流れの中で、事実が削がれ、英雄が忘却されたことはどれくらいあるか(「『イングロリアス・バスターズ』映画大作戦!」より)」という言葉が不意によぎった“名もなき人たち”の物語。以上のことから前々から気にはなっていましたね。

作品の題材やテーマ自体は良さそうで、パンフにもあるように北海道開拓にかねてから興味があった主演の吉永小百合さんの念願だとも思いました。何より大好きなアニメ「ヴィンランド・サガ」以前に作られたある意味でのヴィンランドにも惹かれ、現在公開中の『ゴールデンカムイ』におけるアイヌのことを先駆けて手掛けた意味でも注目でした。

ですがハッキリ申し上げると、勿体無い限りです。死に瀕した少年に淡路の花を見せてあげたり、イナゴの群衆に襲われて焼け野原となった田畑…それらが見せたスケール感については素晴らしかったし、大島ミチルさんが手掛けた劇半の完成度…そこはもう名作の風格を備えてます。しかも石橋蓮司さんが先陣を切って出て、とある行動で訴える場面も素晴らしかったです。そこに関しては言うなれば昨年の傑作映画『ゴジラ-1.0』に通じるパワーも感じられました。

ただその他が退屈ですし、違和感しかありません。まず渡辺謙さんは素晴らしい役者ですが、この映画の役回りに合ってないと思います。夢破れ、嫌悪した世界に身を置き舞い戻る。どうにもそこの説得力が弱すぎると思います。あの風格と雰囲気、加えて役柄のお芝居が噛み合っていないように思えてしょうがありません。

しかも劇中に登場するアイヌの違和が大きいです。まだ当時はマイノリティを当事者に演じさせる土壌が実っていないことは重々承知なんですが、だとしてもアイヌ文化を感じるものがなかったし、これではアイヌの格好をしたただの日本人ですよ…

それにここでの豪華キャストが完全に逆効果。当時の人たちがどう生きて、必死に戦い続けたか…それを見たいのに役者陣で現実へと戻ってしまう。映画が陥ってはならない「誤魔化しや陳腐さを感じ取ってしまう」のがかなり感じられたので、見るたび興醒めなんですよ…これほど素晴らしい題材にこれでは流石にどうかと…

けれどもしも同じテーマで作品を語るなら、間違いなくこの時代に相応しいと思います。その点では世に早く出すぎたのかもしれませんが、もっと巧い語り方を見つけてほしかったですね(結局これまで作られてきた時代劇と大差ないかと)。まあサウンドトラックは欲しくなっちゃいましたがw

ところで、

ラストの“アレ”に『風の谷のナウシカ』を思い出したのボクだけ?
平田一

平田一