てっちゃん

ブンミおじさんの森のてっちゃんのレビュー・感想・評価

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)
3.9
アピチャッポンウィーラセータクン監督さん過去作品展?がやっているのもあり、先回の「光の墓」に続き、こちらも鑑賞しに劇場へ。

先回は、謎の眠り病にやられてしまった私なので、お得意の眠り芸を期待されていることを意識しつつ、自分としてはそんな期待打ち破ってやる!と息巻いて挑んだのですが、今回、、、も寝ました。

でも寝落ちしたのは記憶では一度だけだと思うけど、その一度がけっこう長い時間だったので、いつのまにか物語がけっこう進んでまったな、やっちまった、、、と落胆していたけど、本作のテンポは非常に遅いので、さほど影響がなかったことを知り嬉々して、寝てませんのでとお断りを入れて鑑賞。
そんな訳で感想なりを。

アピチャッポン監督さんは、やっぱり表現者であるということが、本作を観て確信に変わりました。
自分の頭の中のイメージを、世界を表現する方法って、美術とか音楽とか文章だとかで表現できるけど、彼はそれを映画でやっているわけですね。

前回も思ったけど、そうした変わった角度から世界を感じることのできる人の目線を覗きこむことができるのって、とんでもなく私にとっては刺激的になるわけです。

だからアート系作品か、、とか、なんか難しそうな内容だな、、って遠慮してたけど、そうやって”わざと”作っている作品なので、分からないを楽しむというか、こういう視点も面白いなという気持ちで観てみると、楽しんで自分自身もアピチャッポン監督さんの世界に浸ることができたのでおすすめです。

本作はアート系ギャグ要素もあるから、そこにつっこみながらも観ていくことも可能という新鮮味を味わうことも可能です。
なんで幽霊出てるのに、そんな平静でいられるのよ、しかもお茶勧めてるし!、ナマズと戯れているのがなんでこんなにも性的魅力を感じるのよシーンや、猿人らしき妖精?が出て来てもさほど動じず、あら毛がずいぶんと伸びたわねって冷静だなおい!と、心の中つっこみしながら楽しんで観れるはず。

あと、このワードだけは頭に入れておくと良かったなというのがあります。
「前世、現世、来世」
「生、死」
物語はいきなりぶつりと場面が変わったり、唐突な表現が出てきたりするけど、このワードを頭に入れたおくと、すんなりとなにを表現しようとしているのか、そういう関係性だったのか、アピチャッポン監督さんの、はっきりテーマが見えてくるはずです。

私はこのへんのワードを入れないで観たから、それはそれは「???」となって楽しかったけど、このワードを入れて観た方が良かったかなと感じました。

あと思ったのは、「生と死」についての捉え方というか、考え方が日本と近いのかなとも思うので、そういった意味でも、すんなりときたのかも。
日本には”お盆”があるけど、なんかそういった感じ。
みんなを迎え入れる”お盆作品”と言ってもいいのではと思ったほど。

ブンミおじさんが”死”を恐れていたことから、”死”を迎え入れて、そこに向かっていくまでの探検?みたいな現実でもあり、夢のようでもあり、この感覚を味わったとき、何故だか私もすっきりした気持ちになったのです。

カラフルお葬式シーンも、お国柄を感じて、まさに「前世、現世、来世」なんだよなと感じたり。

アピチャッポン監督さん作品をこうして、劇場で観れて本当にしあわせだなと感じながら、無音で車を走らせ、日常の音を聞きながら帰るのが、とても気持ち良かったですね。
てっちゃん

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