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ハクソー・リッジのYYamadaのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.0
【戦争映画のススメ】
ハクソー・リッジ (2016)
◆本作で描かれる戦地
1945年5月 第2次世界大戦
 「ハクソー・リッジ」/ 沖縄 (実話)
◆本作のポジショニング
 人間ドラマ □□■□□ アクション

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・人を殺してはならないという宗教的信念を持つデズモンドは、軍隊でもその意志を貫こうとして上官や同僚たちから疎まれ、ついには軍法会議にかけられることに。妻や父に助けられ、武器を持たずに戦場へ行くことを許可された彼は、激戦地・沖縄の断崖絶壁(ハクソー・リッジ)での戦闘に衛生兵として参加。
・敵兵たちの捨て身の攻撃に味方は一時撤退を余儀なくされるが、負傷した仲間たちが取り残されるのを見たデズモンドは、たったひとりで戦場に留まり、敵味方の分け隔てなく治療を施していく…。

〈見処〉
①世界一の臆病者が、
 英雄になった理由とは——
・『ハクソー・リッジ』は、2016年に製作された戦争映画。第89回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞など6部門でノミネートされ、編集賞と録音賞の2部門を受賞。
・本作は、第2次世界大戦「沖縄戦」に衛生兵として従軍し、75人の命を救ったデズモンド・T・ドスが「良心的兵役拒否者」として米軍で初めて名誉勲章が与えられた実体験を描いたもの。
・本作の舞台は沖縄県であるが、主要撮影はオーストラリアのニューサウスウェールズ州で行われた。
・主演は『アメイジング・スパイダーマン』のアンドリュー・ガーフィールド。共演は『アバター』のサム・ワーシントン、『X-ミッション』のルーク・ブレイシーのほか、『きみがくれた物語』のテリーサ・パーマー、『インターンシップ』のヴィンス・ヴォーンのほか、『マトリックス』のヒューゴ・ウィーヴィングといった面々が脇を固めている。
・監督は『ブレイブハート』(1995)にて、アカデミー作品賞・監督賞に輝くメル・ギブソン。監督作『パッション』(2004)による、イエス・キリストへの生々しい処刑の描写を皮切りに、自らのDV疑惑、反ユダヤ人発言など、長くハリウッドから敬遠される存在であったが、2016年のゴールデンラズベリー賞では、本作の成功に対してギブソンは「名誉挽回賞」を受賞した。

②前田高地
・本作の舞台となった沖縄県浦添市の「前田高地」は国指定史跡「浦添城跡」一帯の丘陵を指し、最も高い場所では標高が約148 mになる、のこぎりのように鋭く切り立ったその姿から、米軍は「ハクソー・リッジ=弓鋸の崖」と呼称した。
・1945年4月1日に沖縄本島に上陸した米軍は嘉数高地を陥落させ、4月25日から「前田高地」への攻撃を開始。
・首里に設置された日本軍司令部を防衛するため、死守しなければならない防壁「前田高地」に対して、日本軍は洞窟に陣地を置き、白兵戦や夜間攻撃などで防戦。
・「ありったけの地獄を一つにまとめた」といわれるほど激しい戦闘により、米軍は多くの死傷者を出すことになるが、一進一退の攻防を経て、頂上付近を占拠した米軍は、洞窟の入口を破壊することで日本軍を閉じ込め、5月6日に前田高地を制圧。
・その後は、5月末に日本軍の首里司令部が陥落。日本軍の南部撤退後も掃討戦は続き、連合国軍は7月2日に沖縄戦終了を宣言した。

③結び…本作の見処は?
日本人でなければ、もっと評価出来るのだが…史実映画ではなく、娯楽映画と割り切り、鑑賞すべき作品。
◎: 「汝、殺すことなかれ」…上映時間の約半分を割いて描かれた衛生兵デズモンドの人物形成と葛藤は、鑑賞者の大きな感動を誘う。ヒーロー映画アンチ論者のメル・ギブソンが、スパイダーマン俳優を主演に据えて監督した「リアルヒーロー」映画。
◎:「『ブレイブハート』と『プライベート・ライアン』以来、最も暴虐で血まみれた殺戮」と評価されたとおり、メル・ギブソンの残酷性が発揮された作品後半部は、
他の作品の追随を許さない過激なミリタリーアクションが展開。
○: 戦地のなかで優しさと強さを両立させる難役をアンドリュー・ガーフィールドが熱演。本作と『チック、チック…ブーン!』(2021)にて2度のアカデミー主演男優賞ノミネートを受けてる若き名優の今後の活躍を期待。
○: 豪華共演陣のなかにあって、衛生兵デズモンドの妻を演じたテリーサ・パーマーの存在感が光る。もっとメジャーになって良い女優。
×: 死を厭わない日本兵の精神性は語られているが「卑怯な不意打ち」シーンは日本兵のみ。また実際は、食糧難で痩せ細る少年や老人が中心であった日本陣営が「屈強な肉体を持つ兵士」と描かれ、日本人として看過してはいけないエンターテイメント誇張が含む映画と認識したうえで鑑賞されたい。
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