つるみん

ハクソー・リッジのつるみんのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.0
【The real heroes are buried over there.】

実話。

第二次世界大戦。激戦地だと言われた沖縄戦に武器を持たない1人の兵士がいた。その名はエドモンド・ドス。戦場下で人を殺すのを拒否し、銃を持たず衛生兵として負傷する兵士達を助けた。インタビューで彼は50人助けたと言っているが、周りの仲間達はその倍の100人助けたと言っていた。実際、75人以上の兵士を助けたと記録されている。

ドスはプロテスタントの一派の熱心な信徒であったことから、宗教的信念を理由に陸軍に入らなくても良かったのだが、皆が戦うのに自分だけ戦わないのは許せないと入隊する。
しかし彼は幼少期での兄弟喧嘩の一件や父親のアル中などによる問題の過去があり信仰含め、銃を持つことはおろか、人を傷つけたり殺したりすることも出来ない。

彼は「人を助ける」そのために入隊したのだ。
もちろん周りからは非難が殺到し、ドスが夜寝ている時に集団でリンチしたりなどする。しかしどんなに殴られても彼は殴り返さなかった。


後半。
いきなり始まる激しい戦闘シーン。
目を背けたくなるほどの衝撃的なシーンの連発。〝プライベート・ライアン〟の冒頭シーンも凄かったが本作は接近戦なので次々と人が死んでいく。血が飛び散り、肉片が飛び散り、まさに戦場といった感じだった。そしてその戦闘シーンがかなり長い。息を吐く間もなく見せられる残虐シーン。体が硬直する。

長い戦闘シーンの後、一旦休戦した両軍。
夜になっても生存者を探すドス。

しかし1番印象に残るのは翌日の戦闘シーンでアメリカ軍は一時退却するも、その中で1人だけ生存者を必死に探し1人でも多く助けるシーンだ。少しでも息があればすぐ駆け寄り処置をとる。さらには傷付いた日本兵(敵)にもだ。
彼にとっては敵も味方も人種も関係なく只々命を救いたかったのだ。

またラストの音楽が非常に悲しい。

エンドロールに入る前に本人達の写真と映像が流れる。ドスの名誉勲章授与式の写真が印象的だった。


余談として、
ドスが戦場に行く前に出会うドロシーという女性(後の妻)と映画館で初デートをするシーンが劇中あるのだが、そこで上映されたのがフランク・キャプラ監督が、戦時中に米政府から依頼されて国民向けのドキュメンタリー映画として製作した〝戦争の序曲〟である。戦争当時だからこその上映作品というのが分かる。



監督は〝アポカリプト〟10年ぶりのメル・ギブソン。彼のバイオレンス表現はさらに酷いものとなっていた。(勿論良い意味で)
名作〝ブレイブ・ハート〟から〝パッション〟〝アポカリプト〟と歴史物が続いているので次は〝顔のない天使〟のようなハートフルな作品を是非撮って頂きたいものだ。
主演はA・ガーフィールド。
〝アメイジング・スパイダーマン〟以降、低迷していた彼には助け舟のような作品。スコセッシの〝沈黙〟にも出演しているので彼の波がようやく来た感じだ。
演技も数段上手くなっていた。


終始重く、暗い。と言うよりかは前半と後半では全く違う雰囲気となっていた。前半は妻となるドロシーとの出会いや入隊してからの初日の訓練シーンなどは笑える部分もある。
なかなかバイオレンス描写が厳しい作品ではあるが観る価値はあるかと…。
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