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ハクソー・リッジのumisodachiのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.7
志願兵でありながら、宗教上の理由から銃を持つことを拒否し、沖縄戦の中で75名もの命を救った実在する衛生兵を描いた作品だ。

主人公の幼少期から、彼にとって重要なエピソード、退役軍人である父親ら家族との関係、運命の人との出会いと恋愛などを丁寧に描いた後、徹底的に過酷な戦場描写に徹するという構成。控えめに言っても素晴らしかった。

沖縄戦。約20万人の命が奪われた地上戦。

映画『沖縄決戦』を観たことがあるだろうか?ひめゆりの塔や旧海軍司令部壕を訪れたことは?追い詰められた人々が身を投げた喜屋武岬は?住民たちが避難したガマに足を踏み入れたことは?そこで、生々しいカマドの跡などを目にしたことは?平和の礎に刻まれた膨大な人の名前を眺めたことは?

私は、ある。

なぜか沖縄には縁があって、特に昔から戦跡に興味があったというわけでもないのに、沖縄戦に関することに触れる機会が多かった。当時のことは想像することしかできないが、あの数か月間、沖縄が地獄だったということについては、少しは分かっているつもりだ。

今回、初めて米軍の立場から沖縄戦を見た。たった一か所、たった数日の描写ではあったが、とても丁寧に、米軍・日本軍のどちらかを軽視することもなく、嘘のように命が散っていく戦場の地獄が描かれていた。(あれほど入り乱れた状況なのに、一体なにが起きているのかを完璧に把握することができる構成には驚嘆した)

この作品の主人公は、強い信念を持っている。ほとんど奇跡のような主人公の強さは、観る者すべてに感銘を与えるだろう。

そして主人公は、その信念を他者に強要しない。他者の行動を非難したり、断罪したりすることは一切ない。必要があれば主張はするものの、理不尽な目に遭っても抗議すらしないのだ。そんな彼を見る周囲の眼差しの変化も、見どころのひとつだろう。

いかにもアメリカらしいマッチョ志向に苦しめられる主人公だが、やはりアメリカは個人主義の国なのだという点も印象的だった。特に、軍法会議のシーンなどに見られた「聞く耳を持つ」という姿勢は感動的ですらある。

本作と、『沈黙』という2つの作品で、アンドリュー・ガーフィールドは神に対して「I can't hear you.」と問いかけていた。しかも、同じ日本の大地に立ちながら。

両作品とも観るのに覚悟を要するが、間違いなく観る価値のある傑作。信念とは。信仰とは。そこには大きな問いかけが込められている。

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