Neki

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャーのNekiのレビュー・感想・評価

5.0
声にならない想いに声を与えることができるからサリンジャーの"声"は偉大だ。それが物語の力というやつで、個人的に大切だと思っている文学の魅力だ。

彼が当時文壇と呼ばれる人たちから受けた無理解というのは、まぁなんだか星の王子さまの序盤と似てる。
「大人」には解らなくなってしまうものがある。諦めとか順応とか、そもそも考えないことによって。でもそれが大人になるということなのだけれども。サリンジャーもgrow upってお姉ちゃんに言われてたし。


なんだかんだ言って大半の人は結局良くも悪くも社会に順応し、順調に大人になる。でもホールデンのように、サリンジャー自身のように一部そこから溢れる人達がいる。子供だと特にこぼれやすい時期がある。そういう人たちのためのキャッチャーであり、文化的雪かきなんだと思う。

まあ、本当はキャッチャーになんかなれっこないんだけどね。後年彼完全に社会から引きこもってしまったし…。イノセントしか認められなくなってしまった。

映画として、ストーリーとしてスマートでコンパクトにまとめた印象を受けるけど、彼の苦悩に対して監督はどこまで理解をしていたんだろう。結局どんな証拠や証言を集めても、ほとんどわからなかったんじゃないだろうか。あるいは全ての解釈を読者に委ねるというサリンジャースタイルに倣ったのかな。

分裂症的で地獄めぐりのようなライ麦畑、奇跡のようで恐ろしい作品である。
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