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ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャーのNのレビュー・感想・評価

4.6
2023.3.28(Tue)
サリンジャー大好きなので鑑賞。

脚色はあるだろうけど、サリンジャーの後年の行動や作品がああなっていった理由が腑に落ちました。
真面目で神経質で潔癖な感じとかは完全にホールデンだし、そこから禅に傾倒してグラース家に帰結していくのも納得。

最近はその日生き延びるのに必死な人たちの映画ばかりを自分が観ていたからっていうのもあって、芸術活動には生活の余裕が不可欠だと思っていたけど、戦場でも脳内で物語を創っていたサリンジャーを見て、真の芸術家にとって環境は関係ないんだなと感服しました。
ある程度の生活基盤が整っている人は自身の感じる生きづらさに囚われる余裕があっても、そのほとんどは何もできない。向き合い続けた人だけが真の芸術家になれる。しかし向き合い続けることはとても苦しいので、どこかおかしくないとできないことでもある。だから名を残すような真の芸術家は変人が多いってワケ!

そしてウーナの話は知らなかったので、ユージン・オニールとチャップリンの名前が出てきてめちゃくちゃ衝撃でした。チャップリンはリスペクトしてるものの、今回ばかりはオイイイ😭となりました。せめてウーナは綺麗に別れてから次に行け...。サリンジャーにとっては苦しい環境の中での数少ない心の支えだっただろうに、戦争だけじゃなくて、この出来事も彼のメンタルに与えた影響は良くも悪くも大きかっただろうなと思いました。それがWikipediaでは2行にまとめられてしまうのがまた何とも切ない…。

全体的に会話がウィットに富んでいてとてもオシャレでした。教授や飲み友達?とのやりとりとか、「JD= juvenile delinquent」のくだりとか。
セットとか洋服とかもオシャレなヨーロッパヴィンテージって感じで非常にツボで、やっぱり私こういうの好きィ〜!となりました。

伝記的映画って出来事をなぞるだけで退屈になりがちなイメージだけど、今作はエンターテイメント性もしっかりあって面白かったです。
邦題がチープなのが残念。

今まではライ麦とかグラース家とか、世俗への反抗をテーマにした作品にシンパシーを感じていたけど、戦争を描いてる作品もこれで読み直せば感じ方が変わりそう。
また読みたいです。
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