EDDIE

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャーのEDDIEのレビュー・感想・評価

4.0
名作『ライ麦畑でつかまえて』の原作者であるJDサリンジャーの生涯を、ニコラス・ホルトが演じる。
なんとも繊細な作家だ。
同小説の主人公ホールデン・コールフィールドは、サリンジャーそのもの。
サリンジャーはウーナという女性と出会ったのをきっかけに小説家を志し、大学でウィット・バーネットという将来の恩師に出会う。
サリンジャーはこの運命的な2人との出会いをきっかけに、数々の作品を世に輩出し、長編小説「ライ麦畑でつかまえて」を様々な紆余曲折を経て完成させる。
最初は偏屈で変わり者、周りの人間は自分の考えを理解してくれない、そんな青年だった。ただし、このすべての感情を自身の表現欲求によって埋めていく。
そして、名作を完成させてから、自分を取り巻く環境が一変。

個人的には本作は素晴らしい出来だった。しかし、そんな感想すらも陳腐なものだと感じさせられたのが、サリンジャー自身がそんなことを言われたいと微塵も思っていないからであろう。
それだけ彼は孤独で満たされていた。
そう、「ライ麦畑でつかまえて」を出版してから、一番認められたい人に認めてもらったのだから。そう、父親だ。
そんな父親は息子を誇りに思ったと同時に、自分ができなかった本当にやりたいことをやってのけたのだと感心するしかなかったのだろう。父がサリンジャーに自分の過去の夢を語りながら、息子を認める場面で私の感動は最高潮に達した。

本作に対する感想は以上だが、何よりもウィット・バーネットという教師の存在が、サリンジャーの作家人生を彩ったと言っても過言ではないだろう。
演じたのはケビン・スペイシー。私の印象は、セブンやユージュアルサスペクツの名演技。本当に素晴らしい俳優だ。
このウィットがいなければJDサリンジャーという名作家は生まれてなかったし、名作「ライ麦畑でつかまえて」も生まれてなかったであろう。
一時的な訣別はあれど、何よりも彼がサリンジャーの一番の良き理解者だったのだろう。サリンジャーの物語であることに違いないが、私はこの映画でこのウィット・バーネットという名教師かつ名編集者の存在を知れたことが良かった。クライマックスの別れのシーンはお互いがそれぞれの気持ちを推し量りながらもリスペクトを抱き合う、そんな場面に感動した。

なんだかまとまりのないレビューですが、本気で素晴らしい作品でした。
EDDIE

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