高橋早苗

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャーの高橋早苗のレビュー・感想・評価

3.5
サリンジャー作品に思い入れのある人ほど、この映画は、観てられないんじゃないかなぁ。と感じた。
彼の人生に、戦争が、色濃く影を落としていて
作家人生にもね。


ただ、戦争がなかったら
ホールデンの物語は、私たちが受け取ることもなかったのではないかしら。



彼が言う
「しっくり来る場所がない」
「書けば 思っていることがはっきりする」

その通りに、書くことはやめず
ただ出版することをやめた彼は
自身が告白するとおり
父や夫、友になる術を知らない
究極の不器用さ。

「現実よりフィクションに 真実味を感じる」
と言った若者、そのままだ。


狂騒は外。外側にいる私たちは、どんなに近づこうとしても、彼の書き表したモノ以外には、近づけない。

葛藤が、彼自身の中で続いたように
私たちも、彼自身を知りたいと思っても、どこか手が届かない。


それでも映画を作ろうとする心意気に拍手だ。
高橋早苗

高橋早苗