YasuhitoArai

田舎町の春のYasuhitoAraiのレビュー・感想・評価

田舎町の春(1948年製作の映画)
3.7
日中戦争後の小さな村。妻は病気の夫の看病をする閉鎖的な生活に嫌気が指している中、かつて恋仲だった医者が夫の友達で家を訪れ・・・という話。

登場人物が最大5人で、しかも主要な人物は3人。閉鎖的な村の中だけで話が進み、ミニマルな印象。会話と、人物の関係性の変化を中心に話が展開するので舞台的。

閉鎖的な生活に嫌気が指す妻に、かつての恋仲だった男が訪れたことによって、抑えていた理性が崩れる。病弱な夫との関係は形式的で、実際に愛情を抱いている医者の部屋に夜訪れる。医者は惹かれている友人の妻への恋心と友人への情に心が引き割かれている。夫も妻への愛情と、妻のために友人の医者との関係を取り持ってやりたいという情で引き割かれている。人間関係の葛藤が多分に盛り込まれた作品。

閉鎖感を象徴する城壁付近の風景と、闇夜に浮かび上がる窓の白、蝋燭で壁に投影された人影が良かった。
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